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『百日紅~Miss HOKUSAI~』、原 恵一監督が感じる確かな手応え。アニメでしかできない表現とは?

2015.04.30

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05年に逝去した漫画家・杉浦日向子の名作コミックのアニメーション映画化が実現。『百日紅~Miss HOKUSAI~』となって登場する。監督は、『河童のクゥと夏休み』や「クレヨンしんちゃん」シリーズなど、オトナが泣けるアニメーション作家として評価の高い俊英・原 恵一。四季折々の情緒を織り交ぜながら、江戸に生きる人々の息吹をさわやかに、生き生きと映し出した。
主人公の浮世絵師・お栄の声を演じるのは、杉浦作品の大ファンだという女優・杏。父であり師匠でもある葛飾北斎を松重豊が演じるなど、豪華キャスト陣が顔をそろえたことでも話題だ。
原監督自身、「敬愛してやまない」という杉浦作品。果たしてどのような意気込みで挑んだのか。「ロックな時代劇」という本作に込めた思いを聞いた。


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もともと、杉浦日向子さんのファンだったそうですね。杉浦作品との出会いはどんなものだったのでしょうか。

■原監督:出会いは、「風流江戸雀」という江戸の町人たちの何気ない日常を描いた作品なんですよね。それを読んだときに、すごく面白くて。時代劇というと、侍が主人公だと思うじゃないですか。でも「風流江戸雀」では、江戸の町人たちが決して豊かではないけれど、日々を楽しく過ごしているということが描かれていて。そういう視点があるんだということにものすごく惹かれて、そこから杉浦作品を意識して読むようになりました。僕が杉浦作品を最初に読んだのは、20代の後半くらいだと思います。それからはすごく杉浦さんに影響を受けて、仕事をしてきたようなところがあるんです。

今回の原作「百日紅」を読んだときはいかがでしたか?

■原監督:杉浦さんの作品の中でも、特に好きな作品なんです。僕は、北斎という人に特別な興味があったわけではないんですが、これは北斎だけの話ではなく群像劇なんですよね。そのキャラクターたちの立ち方が素晴らしくて、そこに興味をもって読みました。

お好きな原作だけに、アニメーション化するにあたってはプレッシャーもあったのでしょうか。

■原監督:好き過ぎる作品だけに、プレッシャーはものすごくありましたね。「百日紅」という原作の魅力が詰まったものを作らなければいけないと。でも他の誰かがやるんだったら、自分がやる。もし他の誰かがやっていたら、悔しかったと思いますよ(笑)。なので完成したときには、「夢がかなった」という気がしました。何よりもね、杉浦さんがもし生きてらっしゃって、この作品を見たときにきっと喜んでもらえると思える作品になったと思っていて。そこが僕にとっては大きかったですね。どこか杉浦さんと相談しながら、作っていたような気がしています。

アニメーション化する上で大事にしたことを教えてください。

■原監督:「正解は原作の中にある」という姿勢で、原作の空気感をいかにアニメとして表現するかが一番の目標でした。原作のコマ割りだったり、セリフだったり、表情。それを一番大事にしようと思ってやりました。そんな中でも、なるべく華やかな場面を作りたいと思っていて。前回作った『カラフル』という映画は、あえて、アニメらしくないアニメ映画を目指したのですが、今回は極力、アニメならではの見せ方。四季折々の描写など、アニメにしかできないダイナミックなカメラワークや手法を意識的に取り入れていきました。

冒頭、俯瞰で江戸の全景を見せるカットもダイナミックでした。他に原監督ご自身が「これはアニメにしかできない」と感じたシーンはありますか。

■原監督:お栄とお猶が舟で隅田川を下って、そこに葛飾北斎の波が出てくるシーンですね。あれはやっぱりアニメーションでしかできない見せ方。あとはお栄がお猶を心配して、走っていくシーン。あそこはワンカット長回しで、カットを割らずにとっているんです。やはりアニメーションでしかできないカットだと思います。

冒頭から、ロックが流れる時代劇です。今回の音楽はロックでいこうというこだわりがおありだったのでしょうか。

■原監督:実はね、杉浦さんてロックがお好きだったんです。杉浦さんのお兄さんが書かれていたことなんですが、妹は江戸の漫画を描きながら、よくロックを聴いていたと。それならば、映画もロックな時代劇にしようと思ったんです。お栄も北斎もロックな人ですしね。僕自身は、音楽を聴きながら作業をするということは最近はあまりありませんが、杉浦さんと僕はほぼ同世代なので、アーティストの好みとかも、結構合うんですよ。

主人公のお栄がとても魅力的です。どのような女性像を描きたかったか。また、お栄役に杏さんを抜擢した理由を教えてください。

■原監督:悪い言い方をすると、お栄という女性は可愛げがないんですよね。でも実はとても純粋な部分もあったり、恋に臆病な部分もあったりと、そういうかわいい女性にしたかったですね。誰の声が一番ぴったりかと考えたときに、絵コンテ作業をはじめたわりと早い段階で、杏さんの名前が僕の中で浮かんでいました。以前、NHKで見た山田太一さん脚本の『キルトの家』というドラマがあって。その杏さんがとてもよかったんです。

なるほど!あのドラマでもちょっとがらっぱちな女性を演じていましたね。

■原監督:そうそう、乱暴な口調でね。あれがすごくよかった。杏さんが歴史好きというのも知っていましたし、本もよく読まれる方だということも知っていたので、もしかしたら杉浦さんの漫画や書かれた作品を読んでいるんじゃないかという期待はありました。実際に会ってみたら、その通りで。杉浦さんの作品は大好きだとおっしゃっていました。アフレコを見たときには、もう、俺の目に狂いはなかったと思いましたよ(笑)。彼女はとても勘のいい女優さんで。こちらが言ったことにすぐに反応してくれました。乱暴な口をきくところと、初五郎という片思いの男性に会ったときのお栄の落差など、見事に演じてくれました。

「わさわさと散り、もりもりと咲く」という旺盛な生命力をもった百日紅の花に、創作意欲を持ち続けた北斎の姿に重ねたタイトルとも言われています。北斎の生き方に刺激を受けるようなところはありますか?

■原監督:よくあんなに絵ばかり描いたと思いますよ、本当に(笑)。杉浦さんも単行本の中で、「100日間、花を咲かせ続ける百日紅と、北斎がだぶった」と書かれていて。それでつけたタイトルということは知っていたんですが、北斎はまさにそういう人だったんじゃないかと思いますね。そういう父親のもとに生まれたお栄は、ある意味、大きな運命を背負わされている女性だったと思います。あまりにも偉大な父親。親子でもあるけれど、ライバルでもあるという。大変だったと思いますよ。

原監督も実写映画やジャンルの違う作品にチャレンジしていますが、北斎の創作意欲に共感する点もあるのでしょうか。北斎のように90歳まで映画を作ってほしいというファンも多いと思いますが…。

■原:90まで映画を作るんですか。僕はそんなにエネルギッシュな方ではないので、それは勘弁してください(笑)。今回の映画に関して言えば、杉浦さんの原作に対しての敬意が一番の原動力になりました。一番のプレッシャーでもあったのですが。僕は、初めて女性に見てもらえる映画が作れた気がしているんです。現代の仕事を持つ20代、30代の女性たちに、お栄の仕事への意欲や不満、恋や家族関係といったものに共感してもらえる作品になったと思います。普段、「ああ、時代劇か」と時代劇にあまり興味を持たない人にも、いや、これはそういう作品じゃないと言いたい。ぜひ見てほしいと思いますね。

【取材・文/成田おり枝】

百日紅 〜Miss HOKUSAI〜

公開日2015年5月9日(土)
劇場TOHOシネマズ 日本橋、テアトル新宿ほか全国にて
配給東京テアトル
公式HPhttp://sarusuberi-movie.com/

(c)2014-2015杉浦日向子・MS.HS/「百日紅」製作委員会

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